着物の色気
着物が好き。
その理由は色々あれど、何が一番かと言えば“色気”。着物の色気が好きなのだ。ちっとも肌を露出していないのに、着物姿は色っぽい。秘めた女の色香が漂う。
洋服は、自分の体に合わせて布を裁断し、ダーツを取って無理やりラインを作りだす。対して着物は、直線断ちした一枚布を体に添わせて身に纏う。加齢で体形が変わっても問題ない。アジア的な対象物に合わせて纏う、包み込む曖昧な優しさが、着物にはある。纏っているだけだから、普通に動いているだけでも着崩れる。でも、そんな自然な布自体のしわやたるみが美しかったりする。着た人の、ふとした仕草が絵になるゆえん。
ところで、女物の着物は、袖付けの下が“身八つ口”と言う布を縫いあわせていない部分がある。男物の場合は身頃の脇も袖の振り下もピッチリと縫い合わせてあり、身八つ口というモノは無い。ではなぜ女物だけここが開いているのかと言えば、おはしょりが必要な女性の場合、着付けの時に自分でここから手を入れて整える必要があるから...というのが一般論。それとは別に、殿方がここから手を入れる為...という説があり、ホントか嘘かは知らないけれど、私はこの説が気に入っている。ひょいと後ろから女を抱きすくめ、身八つ口から手を入れて乳房をまさぐる。表からは、ちょっと見では何をしているか分からない。何とも色っぽいシーンぢゃございませんか。
また、もう一つ好きな着物話。洋服は縦方向に身に着け、着物は横方向に身に纏う。脱ぐ場合も同じ。パンツを履き、Tシャツを頭からかぶって、ジーンズを履くという仕草は、体に対して縦方向である。この縦方向の衣服の着脱は、ゼンゼン色っぽくないと思う。ましてや、ジーンズを履いていて、ロマンティックな場面になっても、「あ、いい。自分で脱ぐ。」ってなまどろっこしい気分になって、秘めた女の色香どころではない。パンストしかり、ガードルしかり、縦方向は色っぽくないと思う。その点、着物は、紐をほどいたら横方向に布を開いていく。帯も横方向に緩めればいい。男が女の着物を脱がせる時、この横方向の動きは自然だし美しい。だから、着物を着る時には、パンツなんか履かない。縦方向が混ざるのはイヤだし、腰巻きで充分だ。横方向に開いていく衣服がいい。さらに、着物は紐をほどかなくても横方向に布を移動させれば、すんなり肌に手が届く。春画を見ると、ほとんど着物を着たまましている。それだけ、女が許せば肌へ近い衣服なのだ。あぁ、なんて艶っぽい。
そして不思議と、ある程度年齢を重ねた女の方が、着物を色っぽく着こなせる。70歳位のおばあさんでも、どこか色気を感じるステキな着物姿の人はよく見かける。でも、同じ様な年齢の女性が、宝石とイブニングドレスを身に付けていたらどうだろう。首筋のシワをきらびやかな宝石で隠したとは言え、色気を感じるステキな姿になれるだろうか。ちょっと疑問。
そんなわけで、私は心に余裕がある時は、出かける用事がなくても着物を着る。スーパーへ買いだしに行き、割烹着を着て炊事や洗濯をする。たったそれだけの事で日常の仕事が楽しくなる。ワクワクする。私のステキな気分転換。目指すは、色気のあるバァちゃん。
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