photo  Baliで生活するには、なんてったってバランスが大事なのだ。 神々の島と言われるだけあって人々は神様を手厚くもてなす。
 朝夕、女性が供物を捧げる姿は、毎日のように見る光景だ。高い祠に供物をのせ聖水をピッピッと…。実に優雅なこの振る舞いは、見ているだけでとても清廉な気持になる。そのあと彼女はスッと腰をかがめ、今度は地面の上に直接供物を置き同じように再び祈る。美しい流れるような動きにうっとりする。

 ところで、この地面の上に捧げられた供物は、Bhuta-Kala/ブトカロといわれる下界の神様や魔物に向かって捧げられたものなのだそうだ。「神様だけを大事にしていると魔物の方がひがんで暴れだすからね…。」と村人が話してくれた。ふぅん。
 また、よくCalonarang/チャロナランといわれる劇がお寺で催されるが、これも聖獣バロンと魔女ランダの終わりなき戦いのお話らしい。眠い目をこすって一生懸命見ていると明け方の3時とか4時に決着がつく。結果はいつも引き分け…。つまり見方を変えれば勧善懲悪は成り立たないという考え方だ。
 この他、呪術にも病気を治したりするホワイトマジックと、その逆のちょっと恐いブラックマジックの両方がある。ブラックマジックをかけられたらホワイトマジックで治すしかない。
 そんな環境にいると自分の中にもある二面性が、フッと鏡に写ったみたいでドキリとする。どんな聖人でも心に悪魔を飼っている。つまり人間性とは、自分の中のその小悪魔を如何にバランスよく飼い慣らすかってことじゃないかな?悪魔野放しの自己中心的わがまま放題じゃ嫌われちゃうし、かといってあんまり悪魔を押し込めちゃっても健全な精神とは言えないだろうし…。
 そんな心のバランス感覚を、Bali人は小さい頃から宇宙観として養っていた。

 人間に、大切なのはバランスです。

back next