| | 明治の作家、徳冨蘆花による随筆、小説、論説からなる作品集。漱石以前の名文家と称された蘆花は、今からちょうど100年ほど前、しばらくの間逗子に住んでいました。この作品集に収められた「湘南雑筆」は、当時新聞連載していたもので、世に湘南の名を知らしめる契機になったといいます。逗子の蘆花記念公園にある郷土資料館へ向かう坂道に、この「自然と人生」の一節を記した立札がいくつも並んでいるのを目にした人もいるでしょう。
100年も前の文章なので、読みづらいところも多々あります。途中で投げ出さずに楽しむには「湘南雑筆」や「自然に対する五分時」から読み始めるとよいでしょう。絵の好きな人は「風景画家コロオ」もいいと思います。
著者曰く「眼に見耳に聞き心に感じ手に従って直写したる自然及び人生の写生帖の其幾葉を公にしたるもののみ」とあり、漢詩、英詩の素養を活かした凛としたリズム感、季節の移ろいをサッと切り取る観察眼がとても素晴らしく、この地を知る人には是非ともオススメの一冊です。
| | | 【シゼントジンセイ】
徳冨蘆花 岩波書店 600円
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