| | 葉山芸術祭・芸術文化政策フォーラム「芸術文化創造は地域を変える!」
失われた10年と呼ばれる1990年代。「本当の豊かさとは何か」という問いが幾度となく繰り返されてきた。そんな時代の中で、葉山という小さなまちで誕生した葉山芸術祭も今年で12年目を迎えた。
オンリーワン、スローライフ…といった次の時代を拓く予感のする言葉が、マスメディアに取りあげられ始めたが、葉山芸術祭は12年の歳月をかけて、それを実践してきたといっていいだろう。
そして、今回、葉山芸術祭を中心にしてひろがった仲間たち「地域・芸術文化創造会議」が投げかけるのが「芸術文化創造は地域を変える!」というメッセージである。
これから始まる活動の序章として開かれたのが今回のフォーラムであった。パネリストに、山梨俊夫(神奈川県立近代美術館館長)、柴田好敏(極楽寺・稲村ヶ崎アートフェスティバル実行委員)、朝山正和(葉山芸術祭実行委員)を迎え、様々な角度から討議が行なわれた。
印象に残るのは、山梨氏の「公の美術館の使命は基準を示すことである」というフレーズである。長年にわたり美術の世界に携わる山梨氏の言葉であるので、なかなかうかつな発言はできないが、あえてコメントをするならば、公の美術館の使命とは、個の自由な表現活動を解釈し価値を付与するという多様な活動のなかで、多くの美術評論家が支持する通説に基づき、広く一般に鑑賞の機会を与えることであると思われる。
家永三郎は『日本文化史 第二版』(1982、岩波新書)のなかで、「文化には、つくり出すはたらきと、つくられたものと、享受するはたらきとの三つの面がある」と言ったが、公の美術館には、ある一定の基準に基づいて、つくられた文化を解釈し、享受する機会を与え、次の文化の創造に貢献するという役割があると言ってよいだろう。
では、地域の芸術祭の役割とはなんであるか。家永三郎の論理にあてはめるならば、文化を創造し、つくられた文化の新しい解釈を生み出し、それを享受する機会を与えることにあると考える。「芸術文化創造は地域を変える!」というメッセージの持つ意味はここにある。つまり、芸術文化創造には、地域文化に新しい解釈を生みだし、「本当の豊かさとは何か」の答えとなるような新しい価値を与える可能性があるということである。
葉山に県立近代美術館がオープンした。芸術文化創造のために、公の美術館がになう役割と葉山芸術祭がになう役割との間に、相乗効果が生まれるような仕掛けを考えるのが「地域・芸術文化創造会議」の役割ではないか、そんな期待に胸が膨らむ序章のフォーラムであった。 http://www.hayama-artfes.com/
| | | 【ゲイジュツブンカセイサクフォーラム】
amazonで検索 楽天で検索 Googleで検索
| |