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e.zの空間
背高泡立草(セイタカアワダチソウ) 暮らす 暮らす



この植物が急速に広がったのは戦後で、北アメリカ原産・菊科の帰化植物である。10〜11月に開花するが、その様が酒を醸造するときに生まれる泡立ちに似ており、そこに「背高泡立草」の名の由来がある。意外や草木染に利用され、煮立てると名前のとおり泡が立つことから、この名がついたとする説もある。この雑草が日本全国に広がったのは、養蜂業者が花のない時期に蜜源として利用しようと種子を蒔いたことから始まったそうだ。秋の花粉アレルギーの犯人とも言われるが、花粉症は草木の花粉が風によって飛散することで起こる。セイタカアワダチソウはミツバチなどの昆虫によって花粉を媒介させる虫媒花なので、花粉症とは無関係と言える。植物として普段、特に意識されるような雑草ではないが、開花時のその鮮やかな黄色の群れは美しい。

私がこの雑草に興味を覚えるのは、自分の居場所の見つけ方である。葉山の中をちょっと散歩しても、そこここにアワダチソウを見つけることができるが、注意深く観察して欲しい。その居場所には、ある一貫性が感じられるはずだ。代表的なのは河原や空き地などであろう。道路際にも棲息するが、そこは決まって私有地なのか町道なのか、どこの管轄になるのか分からないようなちょっとしたすき間、そういう無為な場所を上手に見つけるのである。
つまり、管理されていない空間、管理から遠い空間、それが彼らの住処なのだ。普段、特別に意識されるような雑草でないのは、こういうところにも理由があるかも知れない。

私が子供の頃を過ごした横浜には、この無為な空間(土地)というのがいっぱいあった。こういう場所は、必ずと言って良いほど、子供たちの格好の遊び場となっており、例えばシロツメクサがいっぱいに広がっただけの野原で日が暮れるまで鬼ごっこをするとか、自分の背丈よりも高い葦の仲間が、ただガァーッと生えてるような所で秘密の隠れ家を作るとか、無為な空間はそんなふうに子供たちに使われてきた。
現在、日本全国でこういう無為な空間(土地)は、減少の一途をたどっている。恐らくはバブルクラッシュ以降、さらにこの傾向は強まっていると思われ、実際この葉山内でも、子供たちが集まって遊んでいる空き地そのものを見なくなった。
無為の空間を形容するのに、生きたの死んだのという表現はおかしいかも知れないが、子供の頃のシロツメクサの野原は生きた空間だったように思う。葉山の中に残る「生きた」無為の空間というと、きっと森戸や一色の海岸などが該当するのだろう。
山あいだと河原なんかが、この無為な空間に所属するのだが、「河原乞食」という今では死語になってしまった言葉がある。日本の芸能は、まさに河原などの無為な空間を拠点にして始まっている。管理されない空間で芸能興行を行なう者は、傾奇者(カブキモノ)とも呼ばれた。そう考えると、森戸海岸で自分たちのやり方で芸能興業を行う「オアシス」は、現代日本と葉山の中にあって、正統的な河原乞食を指向する空間と集団なのかも知れない。

例えば、河原が本来いかに無為で管理から遠い空間だったかという良い証拠が5年ほど前の夏、悲劇的な事故として起こっている。集中豪雨による玄倉川の増水で、あのキャンプの人々を流し去った事故のことだ。
生きた無為の空間とは、本来「Your own risk」の空間であり、怖い場所、危険をはらんだ場所です。僕たち子供が昔遊んだ、あのシロツメクサの野原にも危険は沢山ありましたし、ケガや危険と隣り合わせで遊んでいたのが、僕らの子供の頃です。
当然、子供ながらにその危険を回避する勘や、踏み込みの度合いを計る自制心を持ちながら遊んでいました。集中豪雨の中で起こった玄倉川の事故は、管理に慣れきった人間が、危険に対処する術を持たないまま、無為の空間に踏み込んだことに起因した事故と言えないだろうか。

合理性や経済効率の対極にある「無為な空間」は、すき間そのものであり、管理されることに慣れきった都市生活者の目には「ムダ」として映る空間です。
次々に企業寮や大きな土地が売りに出され、合理性や効率性のカッタマリのようなハウスメーカーの住宅が乱立するなか、「ムダ」であったり「無為」であったりする空間は失われ、葉山の町の風景は猛烈に変わりつつあります。

いま葉山内に数多くある、整地され建設を待つ土地を見かけたら、ぜひ気をつけて見て欲しい。必ずアワダチソウが間借り者のような顔をして立っているはずだからだ。しかし、こうした土地は所有者もいれば管理者もいるではないか、よって無為な空間とは呼べないだろう、こうおっしゃるかも知れません。しかし、整地は終わっているが、まだ建設が始まらない、といった土地利用としての「無所属性」を秘めており、こういうわずかな間隙を縫って生えるのがアワダチソウですから、いわばこの雑草の典型的な分布とも言えるのです。県や町が管理者である葉山の海や河川敷、かつて私が遊んだシロツメクサの野原を無為な空間とするのは、同様の意味からです。

私は、アワダチソウを見かけるたびに、彼らの目線になりきって葉山の風景を見たら、その様子はどんなものなのかを想像するのです。奇跡的な経済成長からバブルを経て、この21世紀初頭までの日本と葉山の姿を「無為なる空間」から見つめ続けてきた、数少ない生き証人だからです。

僕らが子供だった頃、子供の生息地と無為な空間は同一のものだったように思います。葉山内にわずかに残された無為な空間にはセイタカアワダチソウばかりが繁殖し、そこにあるはずの子供の姿を見かけることはありません。
子供たちが、もう一度セイタカアワダチソウになれる日は来るでしょうか。


【セイタカアワダチソウ】


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2004/10/8更新
2004/10/5 登録
7275クリック/ 2回更新
感想
04/10/8 e.z  ちょっと、葉山空間には似つかわしくないキーワード内容だったかもしれませんね。だとしたらゴメンチャイです。
ぬほりん  うにゃ、そんなこともないっすよ。葉山で雑草を見て新たな意識を発見することってあるもん。
なおちん  私もセイタカアワダチソウが生えているような無為な空間で遊んでましたよ。それは、もうはるか昔、昭和40年代・・・(笑)
08/10/27 熊蔵  うう。季節じゃ〜! 地獄の季節じゃ〜!
ぬほりん  なんかアレルギーきゃ?
08/10/28 熊蔵  私はアレルギーの百貨店でっせ(^^;
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