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写真は、館山唐桟織りの齊藤裕司さん作「唐桟古渡り 乱立」をマクロで撮ったもの。江戸初期頃までに伝来された柄を古渡りと言い、当時はまだ赤が無かったと言う。この反物は、そんな古渡りの柄を復刻したもので、9月に館山を訪ねて見せてもらった時から「この縞を纏いたい」と心がくぎ付けになった布。綿とは言え、60番手の糸を使い、仕上げに砧打ちで柔らかさと光沢を出した布は、よくみる機械織りの木綿の反物とは随分風合いが異なる。
その布を、洗える絹を裏に付けて洗える袷に仕立てるという前代未聞の無理難題を引き受けてくださったのが、一衣舎の木村さん。
今日は、この反物が仕立て上がったので、ワクワクドキドキしながら一衣舎に引き取りに行った。布は素晴らしい着物になっていた。衣紋掛けに広げられた着物は、うこん色の八掛がパッキリと効いてとても絵になる。早速、袖を通させてもらう。軽くて柔らかく、ふうわりと体に添う感覚は、綿の着物とは思えない。木村さんにお話しを伺うと、なんと5回も水通しを重ね、根気よく縮みを止め、裏地の絹との狂いを極限まで押さえてから仕立てに入る....という手間ひまの賜物だった。
糸を染め布に織り上げる齊藤さん、その布を布の言い分を聞きながら着物に仕立てる木村さん、その真ん中にそんな愛がたくさん詰まった着物を纏わせてもらえる私。極上の幸せ感に感謝の気持ちでいっぱいになる。
着物が好きで良かった。着物が巡り合わせてくれたたくさんの縁に、ありがとう! |