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フーMAP出版に向けたフーさんの取材に便乗して「高橋徳 手描友禅染教室」を受講した。
こちらの工房では、京友禅の老舗「千總」の着物を製作している。皇室関係の着物も手がける「高橋徳」は、いわば京友禅に関する一流の技術を持つ一流の職人が揃う一流の工房だ。色々な意味で“本物”に触れる事ができるこの工房で、手描友禅染めが習えるのである。
一緒に受講したのは、フーさん、オモさん、hさん。四人とも初体験なので、まずは、二枚の小袱紗を製作する「小袱紗コース」を選択。あらかじめ全ての下準備が施された状態の布に、決められた色を挿していくだけの作業。単純に“それだけ”なのだけれど、ものすごく多くの事柄を学ぶことが出来た。
例えば、糸目糊の線のイキイキとした勢い、指定された配色の案配、作業しやすい様に伸子で張られた布、染料の調合など、長年培われた一流の職人技を目の当たりにする。そこに、職人さんが使うのと同じ様な筆を使って、布に染料を挿していく。色が広がる。乾いて変わっていく色目。途切れそうになる集中力。出来上がっていく過程の喜びと楽しみ。
“友禅”という布に絵を描き着物にする工程を通して、日本人の美意識が見えてくる。
この教室で教えてくれようとしているのは、私達が失いかけた“日本人の美意識”なのかもしれない。
教室終了後、友禅着物を纏わせていただく。衣桁に飾られているのとはまったく違う着物の表情に驚きながら感嘆する。絵をまとう感覚。そして、友禅には夢のような魔力がある。みんな、うっとりとメロメロになる。
以前、東京友禅の染色工房稲木を見学させてもらった時にも感じた事だけれど、友禅は、作り手と着手が直結するお誂え品であるべきだ。万人向けの趣味に合わせて作られた着物を百貨店で“選ぶ”のは、やっぱり変だ。友禅は友禅なのだから、いつか自分が纏いたい絵を着物にしてもらって、思いきり非日常なハレの気分を満喫したい。
とは言え、その前に貯金と、注文する為の感性を磨かなくちゃ....。
道のりは果てしなく遠い。
今日の体験は、“見る”だけでは感じ取れない事にたくさん気づかせてもらった。
作業した布は、水元や蒸しなどの後処理をされ、“小袱紗”に仕立てられ、送ってくださる。
絹の風合いが戻り、繊維に定着した色が輝きを放ち、糸目のラインが美しく伸びる様を、今からわくわくと勝手に想像している。
出来上がりがすごく楽しみ。
※写真は、
上:私の正面で黙々と作業するフーさん。
中:配色の見本(手前)と、作業中の布(奥)。
下:灰色と青とぼかしの白が大胆な社長夫人私物の訪問着(奥)。インスパイアされたのは、なんと和菓子屋さんの包装紙(手前)なんですって。笑。自由に発想していいんだね。 |