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2003.4.28 [月] きもの・マスキュリン |
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銀座で朝のミーティングを済ませたあと、今日はのんびり和織と木村さんの個展へ。休日に絵織ちゃんにドタキャンを食らわしながら、平日にのんびりする変な日程。いずれにしても世の中はゴールデン・ウィーク(変な名前)。
和織ではちょっとお目当てがあったのでその件を済ませたあと、夏物を色々見せていただく。夏大島展が落着いたあとだったので、今のオススメは能登上布のよう。すがすがしい能登上布、愛らしい夏の染め帯、と素敵な布を前にするもあまりそそられないのは、台所事情も然る事ながら、夏の着物のイメージがまだ自分なりに固まっていないからと知る。まぁ今年はいただきものもありますし、ゆっくりゆっくり。
夏物の話からバスケさんの小千谷縮みが素敵だったと言うと、ちょうど明日から男の着物で小千谷縮みフェア(フェア?)だというのでそちらも寄らせてもらう。なんと仕立て上がり6万円台だそう。経験値のない私には安いような感じがするが...世の中的にどうなのか?
男の着物は初めてなので、他に来客もないのをいいことに小千谷と言わず色々物色。どうも男性物の方がそそられるテクスチャ−。ついさっきまで和織の方で能登上布を前に「でも最近自分の好みがなんか可愛いものの方に傾いてて、地味なのとかは歳とってからでいいかなーとか思って」などとほざいていたくせに、シックな男性ものを前に「素敵」「いいなぁ」を連発。まぁ、「男性が着てたら素敵」と取ってもらえれば...って誰に言ってるんだろう。
柿渋で染めた鮎漁の網(すごく使い込んだもの?)を軽めの白生地に織込んだ着尺を発見。まばらなよい具合に織込まれたそれはちょっとした無精髭というか脛毛。でもかっこいい、こんなの着てみたい。そもそも柿渋は防水加工のために染めるそうだ。
「え。こんなの着たいの?」と言いたかったに違いない苦笑の平岩さんによると、女性なら髭が邪魔なので袷にした方がよいとのこと。焦茶とかを張るわけね。すてきすてき。
今見るからなのか風合いは夏の雰囲気なのであまりイメージが湧かないが、冬の白はお洒落なんだよなー、とか勝手に一人ごちてみる。素敵だなぁ、バスケさん買わないかなぁ。あでもバスケさんよりは私の方が似合いそうだけど。
とさんざん好き勝手を言って結局小千谷はあまり見ないまま、海島綿と麻の襦袢のお値段だけ教えてもらって店を後に。寸法表をもらうはずだったのを移動の車中で気付くが、送ってくれるかもと不遜な期待をして忘れておくことにする。
銀座で小腹を満たし、そんな足で江古田へ。
ギャラリー陶花は素敵な門構えの一軒家のようで、真ん前に立つまでそこが目的地とは気付かなかった。今思うともっと茶室の外観を見てくればよかったな。
平日の昼時というのに来客は既に2組あり、居合わせたのもはじめはアシスタントの方だけだったので肌着などを見て少しショッピング。綿の帯揚なんて初めて見たので、半襟と一緒にお試し購入。たたんでみたらヘタな絹よりも薄くまとまり、これは使い勝手よしと見た。当然、緩まないそう。
気付かぬ間にご夫妻も現れていたのでメイン(?)の着尺など展示してある部屋へ。
木村さんはずっと接客中だったので奥様にご挨拶して斉藤さんの斜々子、新作、と見せていただく。前評判がよかったので既存の縞のことを忘れてひたすらそればかり見ていたが、次の機会には濃い色もリクエストされているということなので今回は全て見るだけ。斜々子は無地だと思っていたら薄く縞が入っていて少しヒッコリーストライプのよう。掛けてあるものを触ったらあまりに柔らしいので、60番手でも斜々子を織るんですか?と伺ったら42番手を打たれたもので、そうだ、そうだったと丹念な手仕事を思い出す。
そして相変わらず素敵なぬほえり着物をもう一度見ていたら、なんと息子さんがまた算崩しにチャレンジされるとの情報をキャッチ。なんでも昨日注文が入ったとかで、またやる気になってくださったそう。わーん、いいなぁ。
もうひとつの目玉(と言っていいのだろうか)、シルクスクリーンで染めた荒木さんの帯や着尺もたくさん見せていただく。特に帯は巻いてある状態なのでみなさんほとんど目にされなかったということだが、今日は奥様が拡げてくださりほとんどのものを目にすることができた。抽象的な図案の帯も素敵だけれど、私はだんぜん荒木さんの着尺の深い色合いに参ってしまった。
特に深い藍、瑠璃色、のあたりは沖縄の深海のようなイメージを抱かせる深い深いゆらぎも写し取ったような色合いで、インパクトが強過ぎて着こなせないかも、と思わなくもないけれどただただもう好み。茶紫系の芝っぽい柄の入った方なら私にも着られそうだなぁ...こちらも色と光沢が絶妙にマッチしていて美しい。
ラッキーなことに。
もう一つ気に入ったいかにも私が好きそうなロートンの着尺も含め、私が気に入ったのは全て作家さんオリジンではなく一衣舎さんからオーダーされた作品だったので、お嫁にさえ行っていなければ木村さんにお願いして手に入れることができるそうだ。
それを聞いて安心してお茶をいただき、しゃちほこばりすぎていない居心地のよいお庭を眺める。お茶室慣れしていない私にも手の込んだその造りがそうそうないものと判るほど。特に天井の凝っていることといったら、普通の住宅街の中にあるなんてため息もの。
!!!
座った位置から見えなかったので、話題の水琴窟を見てくるのを忘れてしまった。残念。
ああ、素敵なものを見るって気持ちがよい。 |
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2003.4.21 [月] 合同履物顛末記 |
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「今週末は新宿散歩。せっかく新しい着物なのにまた下駄でかっぽらゆかねばならんのか。」となんとか草履を手に入れたかった先週末。
あれよあれよととうとう残されたのは金曜日だけになってしまい、よりによってこの日は半年かけたプロジェクトの役員プレ。とはいえそこそこ偉い人に向けてプレした後は伝言ゲームのごとく彼らが社長にプレしてくれるので、質疑応答までは3時間ほど「待ち」である。始まる前は全てが終わったら銀座線に飛び乗ろうと思っていたものの、どんどん押して押されてこのままいくと終わった頃には閉店時間になりそうな勢いだ。
まずい。こはいかに。
色々考えた末(実はそんなに何も考えていないが)、私一人が説明要員ではないのでこっそりにょろりと脱けさせてもらうことにした。今脱ければ合同履物までおよそ30分、道に迷わなければギリギリ閉店時間の17時には間に合うに違いない。ゆけ、ゆくんだ、ジョー!
浅草駅に着くまでは順調。けどそんな時に限って現金が足りないことに気付き銀行を探してオロオロ。備えがないので憂うワタクシ。コンビニもないし松屋の中にはカード会社用のATMしかない。むむむ。みちゆく高校生を捕まえて近くの銀行を教えてもらったら駅から見える場所にあって少し恥ずかしかった。なにより暑い日にすごい形相で爆発頭の三十路女がよってきたらそりゃーやだよな。
計算外のトラブルも、17時と思い込んでいた閉店時間が17時半だったことが判り、とりあえず着いたところからは全て順調。
こんにちは、と声をかけて入ってみたがすぐ側で作業中のおばさんは特に気にも止めてくれない。どういうシステムなのか予習してくればよかったなぁと思ったが、反応が無いので勝手にずかずか草履の並ぶ奥に踏み込んでいくと、白髪で作業服のおじいちゃまが「今日は何をお探しで?」と聞いてくれた。ああよかった。
初めての草履が欲しくて、あまりフォーマルなところには履いていかないので低めでよく、使い勝手のよい色がいいのでベージュあたりかと思っているのだが、と伝えると幾つかビニール台の草履を掘り出してくれる。
鼻緒の付いていない草履は単純にビニールの塊みたいに見えていいんだかこんなもんなのだか判断がつかない。最近のトレンドは(今春の新商品?)広幅だそうで、靴と違うもんだなぁ...だって細い方がまだ綺麗な形じゃん?と思いながら次々に掘り出されるベージュやらクリーム色、ゴールドののっぺりぼってりに途方にくれる。もっと着物雑誌でどう見えるかを研究するべきだったと反省しきり。参考までに、ここら辺はだいたい5000〜6000円の価格帯が多いようだ。
次々出てくる草履にうーんうーんと鼻を慣らしていたら、「これなんかも色的には近いんでないの?」と見せてくれたのがパナマの台。今までに色んな雑誌で見て、夏はあんなのを履けたら素敵だなぁと思っていたパナマである。
「でもこれって夏物なんですよね?」というと、いやぁ今から履いてもおかしかないさ、と返事。ちょっといいかげんかもと疑いつつ(おいちゃんごめんよ)、欲しいは欲しい。さすがに台だけで鼻緒付きでイメージしていた予算に達してしまう。
キリもないので一応先に進み(言訳だな)、これだったらどんな鼻緒が合うのかなと次のステップに移った。
これがまた難しい。
パナマの台に別珍はないだろう(あるのか?)。地味な紬っぽい濃い色は着物に合わなさそうだしツルツルのビニール紐みたいなのは味気ない...そう、アンティークこってり着物、もしくは上品お茶席orお見合い振袖、のどっちかのパターンにしか振りようのなさそうな鼻緒が多いのだ。一見。
先におじさんに「ここから時間かかります」と真向宣言し(ほんとごめんなさい)、かたっぱしから箱をひっくり返してこれと思うものをあさり出す。だいたいの箱は系統が似通ったものが集まってるのだが、たまに全然毛色の違う半端者がぽっと湧いて出てくるのであまり油断もしてられない。ああもうすぐ閉店時間...
てな具合でわやくちゃになっていたら、ひょっこりピンで出てきたのですね、例の鼻緒。マジョルカっつー名前の素材らしいです。藁のような繊維にブロンズの着色をして編んだような変な素材。パナマ台に乗っけるのにこの素材感はぴったりかも。
あんまりに色んな鼻緒を見てもう自分の目が香水を試し過ぎた鼻みたいになってきたので、とりあえずおじさんに相談。「これって夏真っ盛りになっちゃいますかねぇ?」
すると、その鼻緒は実は同じ素材で台もあって(棚から出てくる)これで箝げれば皇室御用達なのだと言う。ブロンズはたまたまで、他に少し光沢のあるキナリ、焦げ茶、黒もある。このレベルになるとこのお店でも鼻緒箝げて20000円。そりゃー買えたら素敵だがそんな余裕はちょいとないのよと言うと、そうねぇ、そのパナマでいいと思うよと言ってくれたので(もう帰って欲しかったのかもしれない)、安心してその組合せで箝げてもらった。パナマの台はちょっとスニーカーの底みたいに土踏まずに沿った形になっているのできっと歩き易かろう。
気風のよいおばさんと若い女の子のいさかいに目を丸くしながら箝げてもらうのを待つ。経理っぽいおじさんが出てきて、「これは一年中履けますよ」といって箱に詰めてくれた。うーん、パナマが一年中?なんか不思議な感じ。靴だったらコルクソールのサンダルを冬に履いてるくらいのイメージなんだけれど。
閉店時間をギリギリ過ぎかけて会計を済ませ、これで明日は安心とまた仕事場に戻った。ああよかった。 |
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2003.4.16 [水] 新緑の帯 |
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16日までだなぁと思いつつ今日までひっぱって、結局もう一度駆け込みで物産展に寄る。
考えたすえ、しじら織の半幅についてはいきなり染め上がりで受け取るのが結構なリスクに感じ(あのデザインは少しの色の出方で相当雰囲気が変わるのでは)、次回秋に出店される際に赤い裏で濃いめのこっくり系を持ってきてくださいとお願いするにとどめておいた。
実は日本橋高島屋にもすぐまたいらして、秋までにも他の百貨店で何度か予定があるそうなのだが、やはり雑誌掲載の色合いを見て訪れた人が多く、それまではその注文分を染め揃えるだけでいっぱいなのだそう。
そうして年に何度かはお願いできる機会があると安心し、今回の狙いは網代の名古屋帯にしぼる。つかささんとお揃いのはあまりにシンプルなのでもっと先でもいいような気がしてきた。
他の色もやっぱり素敵でとても迷い、帯単体で考えれば他に欲しい色もあったけれど、当面手持ちの着物とその次くらいに仕立てる予定の着物に合う色を念頭に新緑色をチョイス。もう、これが網代になってると畳を背負ってるような帯だけれど(笑)、光ってるし凸凹だし手が込んでる感じがするし、実に私向き。
二度目に訪ねたので多分買うつもりできてると悟っていただけたのか、今日はセールスもゆるやか。同じく草木染めの帯締と、伊達締を、さらに福岡の古代米までうれしいいただきものをしました。仕立て上がりは五月中頃になってしまうけど、まぁいつでも使えるのでゆるゆる楽しみに待っていよう。
待つと言えば...蛭子屋さんの帯がいまだに届かない。そろそろ連絡しないと不安になってきたぞ...
福引券で金券が貰えたので、帰りに太宰府名物の梅ケ枝餅を人数分買い、事務所でほかほかをいただいた。このほかほか具合はまさに口福。んまんま。
これまで物産展なんて全く近寄らなかったけれど、日本各地の風土を知ることができるのは楽しい。せっかく百貨店密集地にいるのだから、しばしば覗いてみようと思う。 |
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2003.4.11 [金] 小森草木染店 |
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念願の小森草木染店に行くことができた。
といっても東急東横店の福岡物産展のお話。
前回伊勢丹に行き損ねた時には実に口惜しい思いをしたが、なんちゃーない、結構物産展といえば出店常連のようだ。今回は事前に「きものサロン・春号」なんかをチェックして商品やお値段をインプットしてわくわくと仕事前の楽しい寄り道。
まずはお目当てのしじら織の半幅をチェック。
第一の誤算。雑誌で見たようなこっくりした色合いは今回来ていなくて、全部淡い色使い。それはそれで時節に合っていて素敵なのだけれど、半幅をポイントにぐっと引き締めたい思いがあるので迷っていたら、社長(と呼ばれるトップの職人さんのよう)から1ヶ月くらい待っていいならオーダーで染めて作ってあげると嬉しいお言葉。ただし天然草木染めなので必ずしも言った通りにはならないけれども、逆に世界に一つなのよと。ふむ。
第二の誤算。「きものサロン」の表示価格が間違いで、実際の値札はその1.9倍。この値段ならと思って勇んできただけに遽には信じ難い貧乏根性がさらに迷いに輪をかける。ふむ。
ところで半幅狙いで行ったものの、名古屋にも私好みの帯が沢山。特に収穫は、以前お花のお稽古のあとしょうちゃん先生引率で大挙和織へ押し掛けた時にツカサさんのしていた白い帯を発見したこと。やっぱり博多系だったんだナ。よく見ると真っ白ではなく(いやツカサさんと同じ真っ白がなかっただけかも)葛で染めた微妙に青い光を放つ白。これは使い勝手よさそー。他の色もありましたがこれが一番狙い目。
もう一つ、織った紐(?)を網代に組んであるやはり博多っぽい感じの名古屋帯にもクラクラ。網代の編み目一本一本の真ん中に差し色が細く入っていて、これが網代の陰影と共に深みを与えている様子。グリーンとか紺色とか、いやこれはどの色も素敵で使い勝手がよさそう。
他にも意匠に凝ったものなどがあったけれど、多分初心者&好みのタイプからいってこの辺の全通ワントーンが狙いどころ。16日までだということなのでもう少し考えてから再度お伺いすることにしたい。
ちょっとだけ残念なのは、店子さんとして立ってらっしゃる女性二人から「持ってきたのを取り敢えずさばくわよ」というオーラが出ていて、積極的なセールスが繰り広げられること。それもなんかお上手じゃないので、「これもステキでしょ、それもステキでしょ、どれもステキだから買っていきなさいよとりあえず」と聞こえてしまうこと。一人なんか「今日は(売れなくて)ダメだわ」とか大きい声でしゃべってた。なんか商品は素敵なのにちょっとがっかり。
でも職人のおじいさんは結構熱弁をふるってくれる印象。今回は急いでいたので早々にやんわりご辞退したけれど、時間がある方はじっくり草木染めについて語っていただくと面白いのでは。
あーしかし。
うーん、幾ら使っちゃうんだろ... |
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