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くもり。涼しかった。
鼻ブラシ二日目にしてふと思ったのだけれど、これを使っているともしかして、
鼻の穴が大きくなるのでは?気のせいか?
鼻を内側から突っ張ることで鼻が高くなるかと密かに期待していたが、それどころではなさそうだ。
先日の一周年パーティの帰りにいい気分で電車に揺られていたら、車内で傘を振り回している人がいて恐かった。傘でドアをガンガン叩いたり、吊り輪をはたいたり。やがてこの人は降りていったけど、恐ろしいなあ。私も含め酔っ払いの多い時間帯なのかな。
去年見かけた電車の中の不思議な人は、不審な行動が恐かったけど、しかし楽しくもあった。
車両の端の席でうとうとしていた私は、どこからともなく聞こえる舟木一夫「高校三年生」の歌で目を覚ました。
何でこんな歌が聞こえるんだろと辺りを見回したら、
私のすぐ脇の、車両と車両を繋ぐ連結部分のドアに挟まれたわずかな空間に男が一人入り込んで、そこで朗朗と唄っていることが分かった。
変な人だなと思っていたら、この人がドアを開けてこちら側の車両に移り、私の向かいの席に座ってしまった。ジャージにサンダル履き、手には競馬新聞を持っていた。
寝たふりしながら観察していると、「高校三年生」を唄い終えた彼は、窓を開けて顔を出し外に向って、「♪仕方がないんだ君のため〜♪」今度は千昌夫「星影のワルツ」を唄い始めた。
ここまでの二曲、すごく上手いって程ではないけど聞いていられる位の歌唱力だった。頼めば三橋美智也「潮来のいたろう」くらい唄ってくれたかもしれない。
「星影のワルツ」を丸々披露し終えると、今度はやおら懐からメモ帳を取り出し、ぱぱぱっ、と何かを書きつけ、そのメモを破りとってチャっ、と私の隣でやはり寝ていた若い女性に向けて放り飛ばした。
電車がちょうど立川に着き、オジサンは競馬新聞を抱えてさっさと降りていったが、隣の彼女は素知らぬ顔で寝とぼけていた。
あのメモに何が書かれたのか気になり、彼女には悪いがこっそり横取りして広げてみた。
そこにはヘタクソなひらがなで、
「たいへんかわいい」
と書かれてあった。彼女に向けた恋文であったのか。
してみるとさっきまでのあの二曲は彼女に贈る歌だったりして。
かなわぬ恋ですな。そりゃ仕方がないよ。 |