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今日のお菓子は川端道喜「寒紅梅」。
この色はちょっとほかにない。ふっくらたっぷりとした風情もたまらない。漉し餡が砂糖餅に包まれているだけなのになんだこれは。素朴さと雅びさを同時に感じるのは、店の歴史をきいているからだろうか。餡がまたも印象的。丸々とした梅の花弁は、ひと弁ずつぽろりと食べ易くもあった。
この菓子は九代目道喜が北野天満宮での梅花祭の茶会にあたって作ったものだという。およそ200年前。十五代目道喜が随筆集『酒れん』の中でこのように書いている。
「何んの変哲もない円い餅菓子にヘラで花弁を付けると、ふっくらとした梅の花が出来上がる。深く付けたヘラ目は、薄く包んだ餅皮をさらに薄くのばし、小豆餡の色が透けて見える程だ。この菓子の決定的な技巧は白餡を使わなかった事だろう。実物の梅より深い落ち着きの色合いと重量感が、浅春、茶席の主菓子としての不動の場をしめた。それは可憐な梅とは程遠い、寒風に凛とした風格をもっている。」
触発されて、梅を観ようと御所へむかった。行きは青空だったのに、帰り道はみぞれまじりの時雨。寒いのなんのって。まさに寒紅梅なのだった。 |