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漆器とはプロが作るものだと思っていたけれど、どうやらそうとも限らないらしい。
ある夫婦が定年後に漆器の修理からはじめて30余年。さまざまな漆器を作るようになり、それがびっくりするようなクオリティで、かつプロには作れないようなものがいくつもできあがった。教室的なこともされており、アマチュアとして漆器をつくる輪は広がっているよう。
『漆塗り その美しさと実用と科学』という本の出版にあわせた展覧会「漆展」がこの週末にありました。大正9年生まれの夫・豊島清さんは「高分子」専門の科学者だった。彼が研究&制作にあたり、妻の豊島愛子さんがプロデュース。清さんはひと月ほど前に亡くなり、本当なら二人そろってお話される予定だったのだろうけども、愛子さんが一人で漆について、漆器について話してくださった。「これはね、こうですのよ」、原節子みたい。女学生みたい。
漆器は弱く手入れが面倒で高価であると敬遠されている、もったいないことですと嘆いておられた。私は漆が大好きで毎日使っているから、そうなのかなあと実感がなかったのだけど、母世代の方が「スポンジで洗っても大丈夫ですか」などと質問しているところをみると、そんなものなのかもしれない。骨董品店でも、愛子さんが数十年前に買ったときと比べると、漆器は1/3とか1/5の値段になってしまっているのだって。
清さんが最後につくったという合鹿椀は特に印象ぶかい。きれいに修復した桃山時代の漆器なども見せてもらった。茶事のためにこしらえた棗や食籠、椀物もすばらしい。特徴的なのは、最後の研ぎ出しをせず、塗り立てになっていること。綺麗すぎないから、昔のもののよう。家族のために作った器は画一的な製品の顔をしていない。温かみがあってどれも力があった。
会場になっていた骨董品店でミニ椿皿を2枚買う。「ようび」の椿皿に憧れていたのだけど、なかなか高価でありまして...。漆がしっかりと厚く塗られている感じがする。早速おやつをのせました。尊敬する植村義次の洲濱。 |