|   | 謡曲『高砂』は、かつてよく婚礼の場で謡われていました。
 
 
神様が世の中を祝福するというおめでたい能(脇能)であり、老夫婦(実は神の使いである、高砂・住吉の「相生の松」の精)も登場することから、そうなったのでしょうか。
 
時代劇や昔の映画などにも登場するし、『高砂や』なんて落語もあるくらい、よく知られていたようです。
 
 
以前、これについて、いくつか教えてもらったことがあります。
 
面白かったので、ご紹介を。
 
 
            ☆
 
 
◇謡われるのは通常、部分的な「小謡」(こうたい)です。
 
(下に詞章を載せておきます) 
 
 
 
◇『高砂』の小謡は、婚礼の席だけでなく、他のお祝いの席(賀寿や祭典など)にもふさわしい。
 
 
◇『高砂』以外にも、婚礼の席にふさわしい小謡はある。
 
 
◇婚礼の席では、返し(繰り返し部分)を避けるという考え方もある。
 
(結婚祝いのご祝儀袋には、チョウチョ結びの水引のものは使わない、というのと似ていますね)   
 
 
◇忌み詞を避け、言い換える(翳ス)こともある。
 
(例えば「出で」というのは、婚礼では忌み詞なので、それを避けるために、
 
「月諸に出で潮の」→「満ち潮の」「満つ潮の」(「入り潮の」とする流儀もあり)
 
 
◇人前式で、三々九度の盃を交わす際に『高砂』を謡う場合、
 
一の盃「所は高砂の・・・」
 
二の盃「四海波・・・」
 
三の盃では「高砂や」
 
と、陰謡(屏風の陰で謡う…というのは、玄人が謡う場合でしょうか) 
 
 
 
こんな感じでした。
 
 
とはいえ、素人が謡うなら、お祝いの気持ちをこそ大切にして、細かいことを気にしすぎず、というようなことを言われました。
 
また、繰り返しを避けたり、忌み詞を言い換えることに関しては、流儀によって、能楽師個人によって、違うかもしれません。
 
 
 
ところで現代でも(洋風の式場でも)結婚式に『高砂』を取り入れることはできます。
 
入場行進のBGMとして謡っていただいたところ、好評でした。
 
スピーチ代わりに謡う方もいます(『高砂』小謡は、一分未満から、最長でも二分強)。
 
 
 
※ ※ ※ ※ ※ 
 
『高砂』より
 
 
「所は高砂の」 
 
所は高砂の、尾上の松も年古りて、老の波も寄り来るや、木下蔭の落ち葉かくなるまで命存らへて、猶いつまでか生の松 それも久しき例かな それも久しき例かな
 
  
 
「四海波」 
 
四海波静にて 国も治まる時つ風 枝を鳴らさぬ御代なれや あひに相生の 松こそめでたかりけれ げにや仰ぎても 事も愚かやかかる世に 住める民とて豊かなる 君の恵みは有難や 君の恵みは有難や 
 
  
 
「高砂や」 
 
高砂や此の浦舟に帆を揚げて 月諸に出る潮の 波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて はや住の江に著きにけり はや住の江に著きにけり
 
 
「千秋楽」 
 
千秋楽は民を撫で 萬歳楽には命を延ぶ 相生の松風 颯々の聲ぞ楽しむ 颯々の聲ぞ楽しむ
  |   |   |   【オイワイノ『タカサゴ』】
  
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 2008/3/29更新 2008/3/28 登録 7442クリック/ 3回更新 |  
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