|  | 澤地久枝さん
この著者の本を何度手にとったことか。しかも一冊ずつを繰り返しくりかえし･･･。
歴史の表舞台には決して出てこない事実や価値観を、丁寧な取材により一人一人の人生の綾と紡ぎながら、淡々と記していらっしゃる。知的に押さえた表現がかえって人間の心に棲む感情を増幅させる。
この“きもの箪笥”はご自分の係累からのお話はもちろん、親交のあった方々、そして琉球で取材した方々（“琉球布紀行”執筆取材時）の着物への想いと合わせながら見事に押さえた文章で書いている。淡交社の“なごみ”に連載されていたものをベースに書き下ろし＆写真を編集されたものらしい。
ちなみに“琉球布紀行”はあまりにも繰り返し読んだため本が傷んでしまい、自分で稚拙な装丁をし直した。
具体的にはお母様の生き方（ご両親とも見事な方）、親交があり着物の師匠でいらした志村政子さん（名優 志村喬さんの奥様）への感謝、向田邦子さんとの深いがさらっとした友情、琉球の様々な染織人達への敬愛に満ちた、しかしさりげない文章と大いなる布への慈愛がたっぷりとした本。
必然としか思えない澤地さんの手元に集まった着物や帯のお写真も美しい。
恐れを知らずに言うならば、更紗・結城の頁は足元には及ばないレベルの同好者として繰り返し読ませていただいた。
向田邦子さん、そしてこの澤地久枝さん。母より１つ下の大先輩女性のモノの見方そして生き方に心から尊敬する･･･そんな本。
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【キモノタンス】
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2010/4/8更新
2010/4/7 登録
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